低脂肪ドッグフードは太り過ぎや体の不調といった問題を抱えた犬にとって、重要な意味を持つ製品です。
しかしその効果や注意点を飼い主がしっかり把握していないと、逆に愛犬に悪影響を与えてしまうリスクも持っています。
- うちの犬に必要な低脂肪ドッグフードはどう選べばいいの?
- 低脂肪ドッグフードのメリットとデメリットの両方を知りたい!
- 膵炎などの病気を持った犬に低脂肪ドッグフードは効果がある?
この記事ではそんな疑問を持つ愛犬家に向けて、低脂肪ドッグフードの基礎知識から選び方のポイントまで幅広い視点で解説しています。
愛するワンちゃんのために低脂肪ドッグフードを探している人は、ぜひ参考にしてみてください。
低脂肪ドッグフードの定義や効果は製品にとって実はバラバラです。
犬にとっての「脂肪」の意味とは?低脂肪ドッグフードが必要とされる理由
人間にとっての「低脂肪食品」は主にダイエット目的や肥満などの生活習慣病を避けるために導入するものとなっています。
犬用の低脂肪ドッグフードも基本的には同じ目的で作られていますが、犬と人間では必要となる栄養素や運動で消費されるエネルギー量に大きな違いがあります。
そのため低脂肪ドッグフードについて調べる際は人間向けの先入観に引き摺られることなく犬のために何の意味があるのか?」を常に意識しておくことが重要になるでしょう。
「低脂肪ドッグフード」の製品としての分類
低脂肪ドッグフードは全体の成分バランスの中で「脂質」の割合を抑えたタイプのドッグフードです。
基本的には「成犬用」と比較して脂質の成分が低く設定されている製品が「低脂質タイプ」や「ダイエット用」などといった名前で販売されています。
多彩なラインナップを持つドッグフードシリーズだと「成犬向け低脂肪」だけでなく「子犬向け低脂肪」や「シニア犬向け低脂肪」といった形で、年齢やライフステージに応じて細かくシリーズ展開されていることもあります。
また病気や疾患に対応する目的で成分調整されている「療養食ドッグフード」の一部も、脂質を抑えたものは低脂肪ドッグフードに含まれると見ていいでしょう。
このように低脂肪ドッグフードとは「通常と比較して脂質が少ないドッグフード」全般を意味しており、具体的な用途については各製品ごとに違いがあります。
犬にとっての「脂肪」の役割とは?量を減らしても大丈夫?
犬にとって脂肪は欠かすことのできない栄養素の一つです。
犬の体を動かす主なエネルギー源としてはタンパク質・炭水化物(糖質)・脂肪(脂質)がありますが、脂肪はタンパク質や炭水化物と比べて約2倍のエネルギー効率を誇ります。
また脂肪というとエネルギーを貯蔵するイメージがありますが、ドッグフードに含まれる脂肪分は消化吸収が早いためタンパク質や炭水化物よりも先に消費されます。
つまり適正量の摂取なら脂肪の大半は運動で使い果たしてしまうため、それだけで太ることはないと考えていいでしょう。
さらに脂肪には以下の特別な役割があります。
脂溶性ビタミンを運び吸収を助ける
脂溶性ビタミンは水に溶けず、代わりに脂質に溶けやすい性質を持つビタミンです。
「ビタミンA・D・E・K」が該当し、どれも犬の健康には不可欠な栄養素となります。
必須脂肪酸(オメガ3脂肪酸・オメガ6脂肪酸)を供給する
犬には体内で生成することができず、食事から必ず摂取しなければならない脂肪酸が存在します。
そのうちオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は皮膚や毛並みの維持などに密接に関連する栄養素とされているため、たとえ低脂肪ドッグフードであっても配合はほぼ必須となっています。
フードの嗜好性を高めて食いつきを良くする
「脂っこいものほど美味しい」と感じるのは人間も犬も同じです。
ドライタイプのドッグフードはそのままだとパサパサして味気ない食感になってしまうため、フード粒を油分(オイル)で覆って食いつきを良くする工夫をしています。
もちろん油分の質が悪いと体には悪影響がありますし、やり過ぎるとジャンクな味わいが癖になってしまい他のフードに見向きもしなくなってしまうといったデメリットも起こります。
低脂肪ドッグフードはその言葉の響きから「何となく体に良さそう」なイメージを持ってしまいますが、実際には製品ごとに成分や効果に大きな違いがあります。
また脂肪自体も犬にとっては必要不可欠な栄養素の一つであるため、無闇に脂肪の少ない食事を与えることには悪影響もあります。
低脂肪ドッグフードが持つ特徴とメリット
低脂肪ドッグフードを愛犬に与えるときは、必ずその特徴とメリットを意識しておきましょう。
低脂肪ドッグフードの持つメリットはデメリットとも表裏一体の関係にあるので、なるべく愛犬が抱えている問題とメリットを噛み合わせるように使う必要があります。
ここからは低脂肪ドッグフードがどんな犬にとって特に有効なのか、より具体的に解説していきましょう。
「低脂肪」には明確な基準がない
現在、国内で販売されているドッグフードには「低脂肪」の明確な基準はありません。
極端な話、メーカーが低脂肪だと主張していればそれだけで低脂肪ドッグフードを名乗って販売することも可能です。
実際に多くのメーカーでは自社の通常版ドッグフードと比較して脂質を抑えた製品を「低脂肪版」として販売しているため、低脂肪の基準はあくまで自社製品比ということになります。
標準的ドッグフードの脂質割合は平均13~15%ほどなので、自然と脂質12%以下のドッグフードなら低脂肪であると判断して間違いはないでしょう。
ただし、よりダイエットや高品質にこだわるメーカーからは脂質を5~10%の割合にまで抑えた製品も数多く販売されています。
低脂肪ドッグフードが持つ具体的な3つのメリット
低脂肪ドッグフードの持つメリットのうち、どの製品にも当てはまる代表的なものは以下の3つになります。
- 摂取カロリーを減らして痩せやすくする
- 中性脂肪やコレストロールの増加を抑える
- フード粒の酸化リスクを避ける
ドッグフードに含まれる脂質は優先的に消費されるとはいえ、運動量が足りていないとやはり贅肉として残っていってしまいます。
ダイエットに関しては運動量を増やして消費カロリーを上げることが重要ではありますが、いきなり散歩の回数を増やしたり愛犬が走り回れる場所を確保することは難しいでしょう。
そのためペット犬のダイエットにおいては低脂肪ドッグフードを採用して摂取カロリーを下げる方法が一番の近道になります。
また脂質の摂取量を落とすと人間と同じように中性脂肪やコレストロールを原因とする生活習慣病を予防する効果も期待できます。
最後の「フード粒の酸化リスク」とは食いつきを良くするためにフード粒の表面にコーティングした油分(オイル)が空気に触れて酸化することで、徐々に変質していってしまう現象のことです。
安価なドッグフードだと賞味期限を延ばす目的で酸化防止剤を過剰に使用しているケースもあるので、その点を踏まえてもオイルコーティングを控えめにしたドッグフードの方が安全性は高いと言えるでしょう。
低脂肪ドッグフードを与えるのに向いた犬とは?
低脂肪ドッグフードの使用が推奨されるのは、標準体型よりもかなり太り気味になってしまっている犬です。
とはいえ犬の肥満は犬種・年齢・去勢や避妊手術の有無といった要素によっても判断が変わってくるので、まずは愛犬の体重と体型をしっかりチェックして本当に肥満に相当するかどうかを確認しておきましょう。
また肥満以外の問題も低脂肪な食事に切り替えることで対処できる可能性があります。
たとえば脂質に弱くお腹を壊しやすい犬や「涙やけ」を起こしやすい犬にも低脂肪ドッグフードを試してみる価値はあるでしょう。
他にも獣医師から診察を受けて脂質を減らすべきと指導された犬に対しては、積極的に低脂肪ドッグフードを導入する必要があります。
膵臓・胆嚢・肝臓・心臓といった臓器に関わる病気や関節痛や椎間板ヘルニアといった骨に関わる病気など、脂質制限のかかる疾患は数多いので獣医師のアドバイスにはしっかり耳を傾けるようにしてください。
低脂肪ドッグフードは愛犬の健康と安全を考えながら、リスク回避策の一環として導入を検討するのがおすすめです。
低脂肪ドッグフードを選ぶための4つのポイント
愛犬に最適な低脂肪ドッグフードを選ぼうとしても、種類が多過ぎてどう判断したらいいのかわからないこともあるはずです。
そんなときはこれから紹介する4つのポイントに絞って製品比較を行いましょう。
この4つのポイントさえ把握しておけば、愛犬に必要な要素を満たしつつ安全性も高い製品を見分けることができるようになります。
脂質の割合が12%以下である
まず真っ先に確認するべきなのは、やはり脂質の割合になります。
現在、日本国内で流通しているドッグフードの平均脂質は13~15%程度であることから「脂質12%以下」を目安にすると確実に低脂肪ドッグフードを見分けることが可能です。
たとえ製品名に「低脂質」や「ダイエット向け」の表記がなかったとしても、脂質12%以下なら十分に低脂肪ドッグフードとして扱うことができるでしょう。
しかし愛犬の状態によっては12%以下ではなく「脂質10%以下」の製品を探した方がいい場合があります。
たとえば極端な肥満で本格的なダイエットが必要な犬や、獣医師からの指導を受けて脂質を一桁台まで抑えることが推奨されている犬には脂質10%以下のドッグフードを与えましょう。
高タンパク質な原材料(肉や魚)をメインに配合している
エネルギー源の一つである脂質を減らしてしまうと、そのままでは運動に必要なカロリーを十分に供給できなくなってしまいます。
足りないエネルギーを補うには低脂肪と同時に「高タンパク質」を実現しているドッグフードを選ぶことが大切です。
また高タンパク質食材には肉や魚など犬が本来好むものが多いことから、脂質に頼ることなく愛犬の食欲を引き出すことも期待できるでしょう。
低脂肪・高タンパク質をウリにしているドッグフードにも実際には炭水化物が多く含まれる穀物系の原材料で「かさ増し」をしているケースが散見されます。
穀物系の食材は決して悪者というわけではありませんが、炭水化物に含まれる糖質は摂り過ぎると問題を引き起こすことがあります。
また穀物の中にはアレルギーや消化不良の原因となる物質もあるので、特定の犬とは相性が悪いこともあるので気をつけましょう。
油脂の原材料を正確に表記している
「動物性油脂」や「植物性油脂」としか記載されておらず、具体的な原材料がよくわからない製品は避けた方が無難です。
動物性油脂の一部は廃棄肉から抽出したものが含まれており、たとえ安全性が確保されていたとしても食材として良質であるとは言えないものとなっています。
植物性油脂には悪玉コレストロールを増大させる恐れのある「トランス脂肪酸」が含まれている可能性があることから、やはり日常的に食べ続けるには不安が残ります。
そのため低脂肪ドッグフードを選ぶ際には動物性・植物性といった曖昧な表現ではなく、明確に油脂の原材料まで記載している製品を選択するようにしましょう。
おすすめなのは以下の油脂成分になります。
- サーモンオイル
- ひまわり油
- 亜麻仁油
- 米ぬか油
- 菜種油
など
これらの油脂は天然成分であるのに加えてオメガ3・オメガ6脂肪酸を効率的に摂取できることから、脂質を抑えながら必要な栄養素もしっかり補ってくれるでしょう。
不必要な添加物を使用していない
たとえ良質な原材料だけを使って低脂肪・高タンパクを実現したドッグフードであっても、そこに余計な添加物まで入っていては台無しです。
特にフードの品質には直接影響しない着色料や香料が使われている製品は要注意となります。
着色料は飼い主から見たフードの見映えを良くするためだけの原材料で、犬にとっては何の意味もありません。
それどころか一部の着色料は海外ではペットへの使用が禁止されているので、有害になってしまうリスクすら潜んでいると考えておきましょう。
香料についても魚粉などの天然素材を活かしていれば余計なことをせずとも愛犬の食いつきを増すことは可能です。
ただし添加物の中でも保存料や酸化防止剤に関しては一定の賞味期限を確保するためにある程度は許容する必要もあるでしょう。
保存料まで完全不使用にしているドッグフードは当然傷みやすくなるため、それはそれで別のリスクが増大することになります。
低脂肪ドッグフード選びのポイントは「脂質とタンパク質の割合」と「原材料の安全性」を確かめることです。
低脂肪ドッグフードの注意点
ここまで紹介してきた低脂肪ドッグフードの特徴やメリットの中には、無視することのできない注意点もいくつか存在しています。
そこで、ここで改めて低脂肪ドッグフードを選ぶにあたっての要注意ポイントをまとめておきましょう。
リスクチェックしておきたい添加物
「余計な添加物の入ったドッグフードを選ばない」と言われても、具体的にどの添加物に危険があるのか知っていないと正確な判断ができなくなります。
低脂肪ドッグフードに使用されていることのある添加物のうち、なるべく避けておきたいものは以下の通りです。
着色料(赤色2号など)
着色料には赤色2号・黄色4号など「◯色◯号」という色と番号で種類分けされているものがあります。
その中には安全なものもありますが、大半は海外では食品への利用が禁止されているなど高いリスクを秘めています。
素人が細かい番号までチェックして安全性を確認していくことは難しいので、基本的に「◯色◯号」と表記された着色料が使われているドッグフードは避けた方がいいでしょう。
また白色を出すためによく使われる「二酸化チタン」についても日本と海外では安全性に対する見解が分かれています。
酸化防止剤(BHA・BHTなど)
「BHA・BHT」と呼ばれる酸化防止剤は強力な効果を持つ一方で、発がん性などが長らく議論の的になってきた成分でもあります。
現在は人体にもペットにも極端な危険性はないとされていますが、やはり悪印象が大きいことからペットフードメーカー各社は自主的に使用を止める方向に動いています。
保存料(ソルビン酸カリウムなど)
ドッグフードだけでなく人間用の食品にも使われている代表的な保存料に「ソルビン酸カリウム」があります。
ソルビン酸を使った保存料はきわめて広い範囲で使われているため、その影響度を正確に測ることは専門家でも難しいとされています。
安全性に関しても「問題はない」とする意見が大勢を占める一方で「単体でも発がん性がある」「特定の原材料と組み合わせることでリスクが増す」との声も根強く聞かれるのが現状です。
発光剤(亜硝酸ナトリウムなど)
発光剤とは加工肉などの表面を明るく鮮やかな色合いにすることを目的とした添加物です。
使用目的としては着色料とほぼ同じで、犬の嗜好には直接関係しない点も同様となっています。
発光剤によく使われる「亜硝酸ナトリウム」自体は適正量を守っている限り安全性は高いとされていますが、人間よりも体の小さい犬に長期間与え続けた場合のデータが不足しているのも確かです。
保湿剤(プロピレングリコールなど)
保湿剤は鮮度を保つ目的でドッグフードにも使われることがあります。
基本的には無味無臭で犬にとっても特に害はありません。
しかし保湿剤の原料の一つである「プロピレングリコール」は、猫に対しては貧血を誘発する恐れが非常に強いことからキャットフードへの使用は禁止されています。
ダイエット目的で導入するならカロリーを要確認
ダイエットを目的として低脂肪ドッグフードを導入する場合は、成分表にあるカロリー表記を参考に給餌量を計算しておきましょう。
高タンパク質食材をメインにしているドッグフードだと低脂肪でも実はカロリー自体はそこまで低くないことがあります。
通常のドッグフードは「100gあたり350~380kcal」程度なので、低カロリーの目安は「100gあたり280~350kcal」程度となるでしょう。
しかし低カロリーのダイエット食は元気な成犬にとっては物足りない内容となり、結局食事の回数が増えてしまうこともあり得ます。
そのためダイエットでは低カロリーかつ、しっかり食べ応えのあるフードを用意してあげることが大切です。
まずは動物病院に相談することを忘れずに!
基礎疾患を持っていたり病気の疑いのある犬には、低脂肪ドッグフードを与えるよりも先に獣医師への相談を徹底してください。
低脂肪ドッグフードには体の不調を治す力はなく、あくまでも悪化を遅らせたり体調を整える効果を持つのみです。
どんな理由であっても愛犬の不調を感じた際はまず獣医師の判断を仰いで、低脂肪ドッグフードの導入はそのあとに考えるようにしましょう。
低脂肪ドッグフードを子犬やシニア犬にあげてもいい?安全に与える方法とは
「成犬用・子犬用・シニア犬用」のように年齢別にシリーズ展開されていない低脂肪ドッグフードの場合、愛犬の年齢によって給与していいのかどうか迷うこともあるでしょう。
また年齢の違いによってドッグフードの与え方自体も工夫する必要が出てくることもあります。
ここでは犬の年齢に焦点を当てながら、最適な餌やりの方法について解説していきます。
犬の年齢に関係なく与えられる低脂肪ドッグフードとは?
ドッグフードをどの年齢層の犬に与えるべきなのかは、製品によって違いがあります。
通常「全年齢向け」と表記されているドッグフードなら子犬からシニア犬まで、年齢を問わずに与えても問題ありません。
また「成犬用」であっても子犬やシニア犬に適した給餌量に変更すれば与えること自体は可能となります。
ただし生後~7ヶ月程度までの子犬には成犬の2倍ほどの給餌量が必要になることから、低脂肪ドッグフードを与えても脂質カットの効果はあまり期待できないでしょう。
逆に成長に必要な脂質まで足りなくなってしまう恐れがあるので、全年齢用や成犬用の低脂肪ドッグフードをそのまま子犬に与えるのはなるべく避けた方が無難です。
子犬向け低脂肪ドッグフードの特徴と選び方
ほとんどの犬種は生まれて7~9ヶ月程度で成犬並みの体格まで急成長します。
子犬の餌にはそれだけの成長を支える栄養が求められるため、通常は低脂肪ドッグフードを使う必要はないでしょう。
ただし小型犬や太りやすい体質の犬に対しては子犬の段階から低脂肪ドッグフードを与えた方がいいこともあります。
そんなときは獣医師のアドバイスを受けながら、成長を阻害しない形で脂質を抑えた子犬専用の低脂肪ドッグフードを導入しましょう。
脂質の代わりにタンパク質を増やし、さらに骨の成長を助ける「カルシウム・マグネシウム・リン・ビタミンC」などを積極的に配合した子犬用フードが特におすすめです。
それと子犬用のドッグフードは最初からフード粒が小さめに作られていますが、それでも幼いうちは咀嚼に苦労することがあります。
シニア犬向け低脂肪ドッグフードの特徴と選び方
シニア犬の年齢に入ってくると代謝が落ち、それまでと同じ食事量ではカロリー過剰になってしまいます。
しかし単純に給餌量を減らすのは犬にとってストレス要因ともなるので、通常のフードから少しずつシニア犬用の低脂肪ドッグフードに切り替えていくようにしましょう。
成犬用とシニア犬用を同時展開しているブランドなら、味や食感はほとんど変えることなく成分だけを切り替えることが可能です。
噛む力が弱ってきているなら子犬に与えるのと同じように、フード粒を小さく砕いたりお湯でふやかすといった工夫を取り入れてみましょう。
シニア犬になると嗅覚の衰えでドッグフードの食いつきが落ちることもあるので、ふりかけのような補助食を加えてみるのもおすすめです。
低脂肪ドッグフードは適正量さえ守ればどんな年齢の犬にも与えることができます。
膵炎の犬に低脂肪ドッグフードは向いている?
低脂肪ドッグフードは膵炎の予防や進行の遅延に役立つ可能性があるとされています。
あくまでも獣医師の指示に従って適切に使用することが大前提となりますが、愛犬に膵炎のリスクがあるときは積極的に低脂肪ドッグフードの導入を考えておきましょう。
犬が起こす「膵炎」とは?
犬が膵炎を引き起こす原因と対策には以下のようなものがあります。
高脂血症と膵炎の関係
高脂血症は典型的な生活習慣病の一種で、食事内容の偏りやストレスなどによって血液中の脂質が異常な値にまで上昇してしまった状態を指します。
人間と生活を共にする犬も高脂血症にかかることは多く、放置すると急性膵炎を起こす原因となります。
低脂肪ドッグフードは手っ取り早く食事の脂質量を減らす効果を持つため、高脂質性を予防する目的とは非常に相性がいいと言えます。
短期間に高脂肪を摂取するのも危険
普段は高脂血症や肥満などの症状がない場合でも、短期間に高脂肪の食事を大量摂取することで膵炎を引き起こすことがあります。
たとえば高カロリー高脂質のおやつを大量にあげてしまったりすると、嘔吐や下痢といった膵炎の症状に繋がることがあるので気をつけましょう。
遺伝や犬種も膵炎のリスクとなる
犬の膵炎は特定の犬種に発症しやすい傾向があるとも言われています。
特にテリア系・コリー系・スパニエル系などの小型犬種やボクサー犬種は要注意とされているので、子犬の頃から低脂肪ドッグフードを使って慣れさせておくことも必要になるでしょう。
また膵炎は遺伝によっても発症するケースがあるので、血統内での発症例もできるだけ調べておきたいところです。
膵炎の犬に向いている低脂肪ドッグフードの特徴とは?
膵炎への対策として低脂肪ドッグフードを選ぶ場合、脂質12%以下よりも脂質を5~10%まで削り込んだタイプの製品を選んだ方が効果は出やすくなります。
ただし脂質5~10%のドッグフードはダイエット用ではなく療養食になってくるので、使用に際しては必ず獣医師に相談するようにしてください。
また脂質を極端にカットしたぶんの栄養を、高タンパク質で補うことも重要です。
炭水化物も必要になりますがそこに含まれる糖質が増えてしまうと今度は糖尿病のリスクが増してくるので、「低脂肪・低糖質・高タンパク」を意識しながらドッグフードを選ぶようにしましょう。
膵炎への対策として脂質を減らすことは重要ですが、炎症を緩和する役割を持つ「オメガ3脂肪酸」のように脂質を通じてしか摂取できない重要な栄養素も存在しています。
低脂肪ドッグフードへのよくある質問
低脂肪ドッグフードはあくまで脂質を減らすサポートをするためのもので、食生活を根本から変えてくれるわけではありません。
低脂肪ドッグフードのまとめ
低脂肪ドッグフードの特徴と主な利用目的は、以下のようにまとめることができます。
- 低脂質の食事によって健康リスクを遠ざけることができる
- ライフステージの変化に応じた栄養調整ができる
- 「低脂肪」以外の要素にも気をつけて選ぶ必要がある
低脂肪ドッグフードには生活習慣病や膵炎などに繋がる脂質の過剰摂取を抑え、適切なカロリーだけを愛犬に与えやすくなる利点があります。
特にシニア期に差し掛かってきた犬など、ライフステージが変化して食事内容を再検討しなければならなくなったときに低脂肪ドッグフードは魅力的な選択肢となることでしょう。
ただし「低脂肪」と言っても製品によってその定義はバラバラなので、愛犬に合ったドッグフードを見つけるためには原材料や成分表を理解する知識が不可欠になります。
またすでに肥満が進行していたり何らかの疾患を発症している犬に対しては、先に獣医師の診察を受けてからそのアドバイスに従って低脂肪ドッグフードの導入を検討するようにしましょう。
低脂肪ドッグフードは愛犬の不調をすべて解決してくれる魔法の食事ではありません。
しかし獣医師の助言を受けながら適切に使用することで、愛犬の日々の苦しみを和らげてくれる可能性も確かに秘めています。