多くのドッグフードに使われている「油脂」。愛犬の健康維持には、適量かつ良質な油脂の摂取が欠かせません。
一方、一部の飼い主さんの間では、カロリーオフや酸化した油脂を排除する目的で「ドッグフードの油抜き」の情報が発信されているため、そのやり方や効果など気になっている方も多いのではないでしょうか。
トリマー、ドッグトレーナー、ペット用品販売士、ペット専門学校講師
大谷 幸代
生体販売・トリマー・トレーナー・新規事業開発・成田空港内ペットホテル開業に伴うプロジェクトリーダー等、25年以上のペット業界での実務経験を積み、現在はペット専門学校講師、海外製ペット用品輸入販売、ペット関連プロモーション事業にも従事。トリマー兼トレーナーとして動物保護活動にも取り組む。
認定資格・所属学会
認定資格
- 愛玩動物飼養管理士
- トリマー
- トレーナー
- アロマセラピスト
- ホリスティックケアカウンセラー
- ペット食育士
- ペット災害危機管理士
- マウスケアメンター
- 一般社団法人日本ペット用品工業会認定 ペット用品販売士
- ペットロスケアアドバイザー
- セラピードッグトレーナー
- 動物葬祭ディレクター
- ペット共生住宅管理士
ドライタイプのドッグフードにはなぜ油脂が使われている?
まず、ドライタイプのドッグフードに油脂が使われている理由についてみていきましょう。
理由は、主に3つあります。
- 必須栄養素である脂肪酸の供給源
- 嗜好性を良くするため
- 栄養バランスの調整
必須栄養素である脂肪酸の供給源
ワンちゃんが健康に生きていくためには、脂肪酸、具体的にはリノール酸やEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)の摂取が欠かせません。
一方で、リノール酸もEPAもDHAも、体内で生み出すことができない成分です。
いずれの必須脂肪酸も、食事以外で体に供給するすべはありません。
そのためドッグフードに使われている油脂の中には、必須脂肪酸の供給源の役割を担っているものも多くあります。
嗜好性を良くするため
犬は昔から「鼻で考える動物」と言われています。
好きな香りがするご飯には、自然と興味を示すのです。
このようなこともあり、嗜好性を高める目的でドッグフードに油脂を使用するケースもあります。
栄養バランスの調整
ドッグフードの栄養バランスを調整するために、油脂が使われていることもあります。
摂り過ぎは厳禁ですが、油脂を含む脂質の摂取はワンちゃんの健康維持に欠かせません。
脂質はエネルギー源になるほか、細胞を守る膜を作ったり皮膚や被毛の健康をサポートする役割を担う、重要な栄養素です。
また、ドッグフードによく使われる油脂の中には、ポリフェノールやビタミンEなど抗酸化作用を持つ機能性成分などを含むものも多くあります。
ドッグフードに使用されている油脂の種類
ドライタイプのドッグフードには、さまざまな種類の油脂が使われています。
脂肪酸源として使われる油脂の一部をご紹介しましょう。
- チキンオイル
- ひまわり油
- サーモンオイル
- フィッシュオイル
チキンオイル
鶏肉が含むチキンオイルは、ドッグフードの脂肪酸源としてよく使われる油脂の代表格です。
チキンオイルは、ワンちゃんの健康維持に必要な必須脂肪酸リノール酸を多く含んでいます。
また嗜好性が高く、犬に興味を持ってもらいやすいという観点で使われていることもあります。
ひまわり油
ひまわりの種から抽出されるひまわり油も、ドッグフードの脂肪酸源としてよく使われる油脂です。
ヨーロッパの一部地域では、日常的にひまわり油を調理に使うほどなじみのある食材です。
リノール酸をはじめとしたオメガ6脂肪酸を多く含むため、ワンちゃんの健康をトータルサポートしてくれる効果も期待できます。
サーモンオイル
鮭から抽出されるサーモンオイルが、ドッグフードの脂肪酸源として使われていることもあります。
サーモンオイルは魚の香りが食欲をそそる上に、EPAやDHA由来のオメガ3脂肪酸を豊富に含んでいます。
さらに、脂肪酸源としてだけでなく、抗酸化成分として知られるカロテノイドやアスタキサンチンの含有量も豊富です。
脂肪酸源としての側面が強いためこちらに分類しましたが、機能性成分源としての役割も担っていると言えます。
フィッシュオイル
サーモン以外の魚由来のオイルが配合されていることもあります。
フィッシュオイルはいずれもサーモンオイルとよく似ていて、EPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸の含有量が多く、脂肪酸源として配合するのにぴったりです。
また嗜好性にも優れており、フィッシュオイルを入れることで食いつきが良くなる効果も期待できます。
ドッグフードの油抜きのやり方
ネットで検索するとドッグフードの油抜きは下記の手順で行っているようです。
- 1食分のドッグフードを大きめのお皿に入れる
- ドッグフードが浸かるくらいの量の熱湯を注ぐ
- ドッグフードを熱湯に浸したまま1分ほど待つ
- 1分経ったらドッグフードをざるにあげてよく水を切る
- 人肌程度に冷ましたらいつも通りフードボールに移して愛犬にあげる
ドッグフードの油抜きは推奨されていません。
見てわかる通り、基本油揚げの油抜きとほぼ同じ手順です。
ドッグフードの油抜きは非推奨!目的としている効果は得られない
ドッグフードの油抜きは下記の目的で行われるケースが多いようです。
- アレルギー対策のため酸化した油脂を抜く目的
- カロリーオフ(ダイエット)
しかし、冒頭でも記載したようにペットの専門家や獣医師、ドッグフードメーカーでは効果がないと言われており、注意喚起もされています。
では、どうして推奨されていないのでしょうか。その理由とともに解説していきます。
アレルギー対策のため酸化した油脂を抜く
結論からいうと、ドッグフードの油抜きでは酸化した油脂を完全に除去することはできません。
油脂は原材料の肉や穀類とミキサーで混合し配合しているので、家庭でできるレベルの手法では完全に除去することはできません。アレルギーがある場合はこの程度ではアレルギー発症防止の効果はないため、そのまま与えるのは危険です。
カロリーオフ(ダイエット)
愛犬にダイエットさせる目的で油抜きを行う方もいますが、大幅なカロリーカットは期待できません。
後ほど解説しますが、必要な栄養素が破壊されてしまいます。
ドッグフードの油抜きはデメリットだらけ
ドッグフードを油抜きには下記のデメリットがあります。
これから試してみようと考えている方も、すでに油抜きしたドッグフードを愛犬に与えてしまっている方も参考にしていただき、愛犬にはその子に合ったドッグフードを選んであげましょう。
- 油抜きをすることで必要な栄養素が破壊される
- 愛犬が火傷してしまうリスクがある
油抜きをすることで必要な栄養素が破壊される
油抜きの手順では、熱湯を使用していますが、熱湯の使用は配合されているビタミン成分を破壊するため不適切とドッグフードメーカーや専門家が警鐘を鳴らしています。
愛犬が火傷してしまうリスクがある
ドッグフードが冷めたと飼い主が判断していても、実際は熱い場合も。犬は熱くても食べてしまう習性があり火傷の危険があります。
オイルコーティングされていないドッグフードも検討する
油っぽさが嫌でドッグフードの油抜きをするなら、いっそのことオイルコーティングされていないドライフードを検討してみましょう。
油抜きをする手間もかからず、製品本来の栄養バランスも崩すことはないのでおすすめです。
ドッグフードの油抜きは効果なし!必要な栄養素も破壊してしまう
熱湯をかける過程でビタミンが破壊され、製品本来の栄養バランスが崩れてしまうため、愛犬が必要な栄養を摂取できなくなってしまいます。